私はこれまでの研究開発人生で、有機溶媒を含めて、実にさまざまな化学物質に触れてきました。
誤ってアンモニアガスを吸ってしまって悶絶したこともありました
こんな私なのに、食品会社で働いた経験もあって、「食」に関しては、どのような成分がそこに存在するかが結構気になります。
そこで、この記事では、カップ麺に関する「化学物質」について書いてみたいと思います。
食べる直前のカップ麺にはさまざまな物質が存在する
カップ麺をつくり、さぁ食べようと思った時、そこにはさまざまな物質が存在します。
その中には、程度の差はあれど、食品素材以外に由来する物質も存在します。
過度に気にする必要はありませんが、安全基準を十分に下回るものも含めて、少なくとも「どのような物質がそこに含まれる可能性があるのか」を知っておくことには意味があると思います。
食品成分以外の物質はどこから来るのか
食品素材以外の成分がどこから来るのか考えてみます。
カップ麺の容器
カップ麺の容器の素材は何か
カップ麺の容器は主にポリスチレンなどから出来ています。
カップ麺の容器は優れもの
ポリスチレン容器は、極めて優れた断熱性と経済性を兼ね備えた容器です。
熱湯を注いでも手で持てますし、安い値段でカップ麺を消費者に届けることも可能になります。
この実現には、開発や製品化に関わった多くの方々の努力があったことが容易に想像できます。
一方で、ポリスチレン容器に熱湯を注いだ場合、ポリスチレン容器の構成成分が熱湯側に溶出することが報告されています(中田ら 分析科学 vol. 49 No. 10 (2000))
しかしながら、こうした溶出化学物質の溶出濃度はppb(10億分率)のオーダーであり、極めて微量です。
このことに関して、日本スチレン工業会のHPでも、人体へのスチレンの摂取量について試算が行われており、それがWHOの基準を大幅に下回るものであることが示されています。
そもそもスチレンは水に溶けにくい
少しだけ化学的な話をします。
そもそも、ポリスチレン容器の構成成分は疎水性(水と馴染まない)であることから、水にはなかなか溶けません。
そのため、熱水をポリスチレン容器に注いだとしても、ポリスチレンを構成する化学物質は熱水側には移行しにくいと考えられます。
一方で、極めて微量であるとは言え、溶出してくることは事実なので、「念には念を入れて、避けておきたい!」と考える方もいらっしゃると思います。
そうした方は、ポリスチレン容器から麺を取り出して、どんぶりなどの別の容器に入れてからお湯を注ぐようにすることで、溶出スチレンを簡単に回避できます。
ひと手間かかりますが、手軽にできるため、溶出物質が気になる方にはお勧めの方法です。
カップ麺の容器には使い道が沢山ある
上記の方法でカップ麺を食べると、空のポリスチレン容器が手に入ります。
このポリスチレン容器は実にさまざまなことに役立ちます。
〇災害対策になる
空のポリスチレン容器を備蓄しておくと、災害時に役立ちます。
災害時は水が不足することから、食器を洗えません。
ポリスチレン容器なら洗わずに使い捨てできるため、とても便利です。
そのまま使用してもいいですし、ラップがあれば、以下の写真のようにラップをかけて使うことで何度も再利用できます。
但し、1点だけ注意してほしい点があります。
ポリスチレン容器に油や油っぽい食品、お酒などを入れることは避けてください
上にも記載しましたように、スチレンは疎水性(油に馴染む)です。
そのため、ポリスチレン容器に油を加えると、容器成分の溶出が強まる恐れがあります。
このことは、上に紹介した文献の内容とも一致します。
お酒を入れることも、同じ理由から控えてください。
ポリスチレン容器は、そのような使用を想定したものではありません。
〇生ごみ用のゴミ箱になる
ポリスチレン容器は、台所で生ごみ用のごみ箱として活躍します。
以下のようにビニール袋をかければ、立派なゴミ箱が完成します。
汚れても気軽に新しいものに交換できますので、ポリスチレン容器は衛生的にも経済的にも優れています。
カップ麺も食べれて、溶出化学物質も避けれて、空の容器まで手に入るなんて素敵ですね
麺そのもの
次に、外来化学物質の別の由来元として考えられるのが、麺そのものです。
麺の原材料は主に小麦粉です。
日本の小麦自給率は低く、ほとんどが輸入品です。
輸入小麦の残留農薬については、日本でも国際基準に準拠して厳しく検査管理されています。
一方で、こういった取り組みがなされていても「可能な限りリスクは避けたいな」と考える方もいらっしゃると思います。
そのような方にお勧めの方法があります。
湯切りする
仮に極微量でも麺の中に残留農薬が存在していた場合を考えます。
そのような麺に熱湯を注いだ場合、まず麺の構造が緩みます。
また、一般に、100℃近い温度の水は、低温の水と比較して物質を溶解する力が強いです。
これら2つの要因から、仮に残留農薬が存在した場合、少なくともその一部が熱水中に溶け出てきます。
しかし、ここでそのお湯に粉末/液体スープを入れて食べてしまうと、極めて微量であるとはいえ、そうした物質を摂取することになります。
このリスクを回避する方法は、ただ一つです。
湯切りしてそのお湯を捨ててしまうことです。
そして、新たなお湯に粉末/液体スープを溶かし、湯切りした麺をそこに加えて食べることで、万一のリスクを回避できます。
〇味が良くなる
実際にやってみると分かるのですが、最初のお湯を捨ててカップ麺を作ると味が良くなります。
ラーメン屋さんでも、麺を煮たお湯をラーメンに使用することはせず、必ず湯切りします。
このことからも分かるように、湯切りは味の面からも意味のある行為だと考えらえれます。
〇油分もカットできる
湯切りすると、余分な油分もカットできます。
〇つけ麺にもできる
湯切りした麺は、つけ麺にもできます。
別の容器に入れたお湯に粉末/液体スープを溶かして、湯切り後の麺をそのスープにつけて食べることができます。
これには、さらなるメリットがあります。
実際にやってみると分かるのですが、つけ麺用に必要な粉末/液体スープの量は意外と少なく、つけ麺の食べ方にすると、粉末/液体スープの使用量を抑制できます。
これによって、塩分や添加物の摂取量を抑制できます。
あまった粉末/液体スープは別の料理につかってもいいと思います。
残留農薬も添加物も塩分も避けれて、美味しくカップ麺を食べられるなんて素敵ですね
まとめ
カップ麺を食べる際には、以下の3つの方法で、化学物質の摂取リスクをかなり減らせます。
化学物質が気になる方はぜひ試してみてください。
1~3までのすべてを併用すると、あらゆる化学物質摂取の可能性を低減し、美味しくカップ麺を食べることができる上、あまった粉末/液体スープと空の容器まで手に入ります!
1.別容器で作る(ポリスチレン容器からの溶出物質を回避する)
2.湯切りする(麺からの溶出物質を回避する)
3.つけ麺として食べる(粉末/液体スープ自体の摂取量を減らす)
そんなにカップ麺が食べたいんですか?
最近のカップ麺ってとても美味しいんですよ...