実際に、健康食品の原料物質(有効成分)の開発を行ってきた自身の経験も踏まえて、
「有効成分(化学物質)が同じなのに薬やサプリメントの効果に何故違いが出てくるのか」について、
一般的な話として、その理由を解説します。
有効成分の含量が違うから
これはある意味当たり前ですが、同じ有効成分でもその含量に差があれば、その有効成分を含む製品の効果に差がでます。
有効成分をどのくらい含めるかは、基本的には規格上の話です。
有効成分の純度が違うから
同じ有効成分を含む場合でも、その純度に差があれば、その有効成分を含む製品の効果に差がでます。
これは、技術的な問題です。
仮に純度が低い有効成分を使って最終製品をつくっていれば、
その製品には不純物が多く含まれているということです。
そして、その不純物が極めて低濃度であったとしても、
物質によっては、最終的な効果に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに細かい話をすれば、
有効成分の純度が同じでも不純物の種類が違えば効果が違うこともあり得ます。
ジェネリック医薬品の場合、
「先発医薬品と同じ成分を含むのに安くてよい」という点が、その利点としてよく挙げられますが、
有効成分に限って厳密に言えば、
「その純度も超微量の不純物の量も種類も完全に同じならば」
という前提があります。
有効成分の純度に違いがでるのは何故か
これは、実際に低分子化合物やタンパク質を扱った経験のある方なら同意していただけると思うのですが、
物質の合成や単離精製には、考慮すべき点が多く存在します。
私は大学でも企業でも多くの研究者や開発者を見てきましたが、
同じ化合物またはタンパク質を合成または単離するにしても、
人によって最終物の純度がまるで違います。
分析してみると、一目瞭然です。
今挙げた例は個々の研究者間の差ですが、ここまであからまさまでないにせよ、こうした差は会社間でも確実に存在します。
会社間の差は、個人の場合と同じく、れっきとした技術力の差から生まれます。
技術力の低い会社がつくる有効成分の純度は低くなる可能性があります。
この技術力の差は、その会社の人材の差、設備の差、意識の差などに起因します。
人材の差
技術の源泉は人です。
どの会社も、うちの会社は技術があるとアピールしますが、その技術は人です。
良い人材がいなかったり、いたとしても待遇が悪かったりすると、
製品の開発/製造/品質管理に関わる人材の質やモチベーションが下がる結果として、
「有効成分の純度差」という重大な差がでます。
また、研究開発者の間で技術を継承する仕組みが存在するかも重要です。
個々の人材が何の交流もなく、バラバラに仕事をしている場合もあり、そうした場合にもこうした問題が表面化する場合があります。
設備の差
仮に、良い人材がいたとしても、十分な設備や適切な設備が導入できていない場合もあります。
設備が古い場合は、有効成分の合成や培養、精製などが不十分になるだけでなく、有効成分に何らかの物質が混入することさえあり得ます。
意識の差
意識の差によっても、有効成分の純度が変わります。
会社全体や関連部門の意識が低いと、
極端に言えば「これくらいでいいか」と妥協する結果として、他社に純度で後塵を拝することになります。
特に研究開発は、「どのくらいこだわれるか」が勝負になります。
会社の意識の差は、「風土の差」とも言えると思います。
最終製品の物質組成が違うから
仮に同じ純度の同じ有効成分を同じ含量で含むとしても、
最終的な製品組成が違うと、効果に差がでる可能性があります。
つまり、有効成分以外の物質の問題です。
配合が異なる
そもそも有効成分以外の配合が違う場合があります。
医薬品やサプリメントには、さまざまな賦形剤や添加物が配合されます。
これらが質的/量的に違えば、当然、最終製品の効果が異なってくる可能性があります。
微量成分が異なる
規格上は他の製品と組成が同じであったとしても、
最終製品中の微量成分に差があれば、最終製品の効果に差がでる可能性があります。
微量成分の差が生じる可能性について各段階に分けて説明します。
製品の製造段階
こうした製品中の微量成分の差は、製品の製造段階で生じることがあります。
製品製造においては、さまざまなものが混入するリスクがあります。
初歩的な混入物の例としては、
ホコリやチリ、設備からの溶出成分、設備の一部、微生物、微生物の分泌物質、製品容器の一部、製品容器からの溶出成分などが挙げられます。
品質管理段階
品質管理部門もとても重要です。
問題のある製品ロットを発見できる仕組みや人材がいないと、安定した組成の製品を安定供給できない可能性があります。
保管/輸送段階
保管や輸送の段階で温度/湿度/衝撃の管理などに問題があれば、熱による物質変化、微生物繁殖、製品容器の密封性の低下などの問題が生じます。
結論
同じ有効成分を含むのに製品の効果が異なる理由は、上に挙げたように実にさまざまです。
サプリメントや薬を選ぶ際には、
「有効成分が同じでも効果が違う場合がある」ことを知っておくことは重要だと思います。
薬で言えば、同じ有効成分を含むジェネリック医薬品でも、
上記のような違いから効果に差が出てくる可能性があることには注意が必要だと個人的には思います。
この記事で紹介したことが皆様の健康に少しでもお役に立てばとてもうれしいです